tram vista(仲田の海)















 今回の「tram vista(仲田の海)」では、伊藤が大愛知なるへそ新聞に執筆している連載小説「仲田の海」をもとにして、紙面上と展示空間それぞれで小説作品と美術作品の同時展開を試みています。伊藤は大学在籍時に美術作品の制作と並行して小説を書き始め、そのときに感じた「文章を読む」ということとそれを「視覚的にとらえる」ということについて、あるいは「目のまえに見える風景」と「言葉による風景」のあいだに横たわっている絶対的な矛盾といったものが創作の原点となっています。
 大愛知なるへそ新聞の連載小説「仲田の海」は、かつて名古屋市今池の仲田に住んでいたという母親の幼少時の記憶を軸にして、そこから伊藤自身の言葉を織り交ぜて書かれたフィクションの世界です。今回の展示ではギャラリーの壁面にあぶりだされた風景に、他者の記憶やフィクションという要素が加わり、さらに町の風景のように日々更新されていくなるへそ新聞のコンセプトに同調して、伊藤本人が展示中の作品に文章を書き加える(あるいは部分的に消していく)という試みも展開されます。小説でありながらも美術であり、あるいはそのどちらでもないかもしれない、純然たる言葉そのものを模索するような伊藤の作品に、わたしたちの言葉がしずかに揺り動かされていくことを本展に期待します。(展覧会紹介文より抜粋)


2016|壁面にインク|インスタレーションサイズ
個展 “tram vista(仲田の海)”  TIMES GALLERY(大愛知なるへそ新聞社内)