補完される景色
特に支障はないと感じていたのだが視力は徐々に低下していて、ついに眼鏡を買うことになってしまった。
買ってすぐに眼鏡をして、それがちょうど夜だったこともあって、まず街の光のたしかな輪郭を捉えた。次に看板や車内の吊り広告などの媒体に載った文字の明確さを捉えた。そして明くる日の朝、いつものベランダから見える景色の輪郭のたしかさと、その向こうにある山の色と稜線をたしかに捉えた。
新鮮な感覚である。ここ最近に行った美術館やギャラリーにもう一度行って作品を見直したいくらいである。
◇
ただ、こうしてずいぶんと世界が晴れた気はするけれど、ではいままで裸眼で見ていたものはなんだったのかとか、いつからそんなにブレていて、いつまで裸眼の状態で世界が明確に見えていたのかとか、自らの視力に対しても、世界を補完しようとする眼鏡に対しても多少訝しく思ってしまう。
僕は物事のアウトラインだけを捉えてそれで判断してしまうことが多々あるのだが、そういう性格はこの近視と乱視が起因していたのではないだろうかとさえ思う。眼鏡は性格をも補正しようとするだろうか。
◇
今はまだ眼鏡をしていることを忘れて指をぶつけることもあるし、耳の裏側に大袈裟な異物としての機器を装着しているような違和感を覚えることもある。幸か不幸か、僕は目薬をまともに差せないような触覚を併せ持っていて、コンタクトレンズなんて以ての外だから、この眼鏡とこれからの生涯を付き合っていかなければならない。
眼鏡との良い距離感を築くことができればと願っているが、ひとまずこの一週間ばかりは補正するかしないかのグレーゾーンで見ることをたしかめているような心持ちが続いている。
買ってすぐに眼鏡をして、それがちょうど夜だったこともあって、まず街の光のたしかな輪郭を捉えた。次に看板や車内の吊り広告などの媒体に載った文字の明確さを捉えた。そして明くる日の朝、いつものベランダから見える景色の輪郭のたしかさと、その向こうにある山の色と稜線をたしかに捉えた。
新鮮な感覚である。ここ最近に行った美術館やギャラリーにもう一度行って作品を見直したいくらいである。
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ただ、こうしてずいぶんと世界が晴れた気はするけれど、ではいままで裸眼で見ていたものはなんだったのかとか、いつからそんなにブレていて、いつまで裸眼の状態で世界が明確に見えていたのかとか、自らの視力に対しても、世界を補完しようとする眼鏡に対しても多少訝しく思ってしまう。
僕は物事のアウトラインだけを捉えてそれで判断してしまうことが多々あるのだが、そういう性格はこの近視と乱視が起因していたのではないだろうかとさえ思う。眼鏡は性格をも補正しようとするだろうか。
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今はまだ眼鏡をしていることを忘れて指をぶつけることもあるし、耳の裏側に大袈裟な異物としての機器を装着しているような違和感を覚えることもある。幸か不幸か、僕は目薬をまともに差せないような触覚を併せ持っていて、コンタクトレンズなんて以ての外だから、この眼鏡とこれからの生涯を付き合っていかなければならない。
眼鏡との良い距離感を築くことができればと願っているが、ひとまずこの一週間ばかりは補正するかしないかのグレーゾーンで見ることをたしかめているような心持ちが続いている。
