声にすること scene:02 -note house- (2013.04)















2013|紙に万年筆, ガラスケース, 木箱|インスタレーションサイズ
“声にすること scene:02 -note house-” light house(常滑)


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「声にすること scene:02 -note house-」について

「声にすること」というのは、いわゆる「朗読会」と言いかえることもできるのかもしれませんが、ここでは対象となるテキストを朗らかに読むことを目的としているわけでもなければ、また、パフォーマンスとしてあらたまった会を催すというわけでもなく、春先のとある一日のあいだ、ちょっとばかり交通の便のわるいところにある川べりの古い家で、その場所の景色に添うように、ひとつの物語を声にしていくというものです。

もしたっぷりと時間があったなら、一日中その声や景色に寄りそってみてもいいのかもしれませんし、あるいはかぎられた時間のなかで、ふとたずねたときだけに聴こえる声や景色とすれちがってみてもいいのかもしれません。

いずれにせよ、「声」というものは聴こえたと思った瞬間、すうっと記憶に留まったり、あるいは風か光のようにとおりすぎて、かたちを纏うことなくきえていく、ひとつの言葉のありかたです。(もちろん文字としての言葉はどこかに書き留めれば、それは一時的なものではありますが、かたちとして残ります。)日常生活における会話のなかでの「声」も、いわゆる朗読会において届けられる「声」も、おしなべて平坦に、景色のなかに身をゆだねるように聴くことができるのであれば、あるいは言葉そのものの離陸と着陸のあいまを、言葉がきえていくまぎわの地点を見極めることがいつかできるのかもしれません。

今回は昨年の春から書きつづけている小説「note house」を一日かけて、ときおりお茶を飲んだり、お腹がすいたらなにかを食べながら、そこでたずねてきてくれたひとたちと話をすることもあるかもしれませんし、言葉そのもののありかたをかぎりなくおしなべた地点をめざして、ゆっくりと声にしていきます。