note house (2008.10)







愛知県常滑市は古くからの焼き物によって育った町である。

現在、焼き物による産業は影を潜め、必ずしもかつての賑わいが永続しているとは言い難い。その代わり、というのも語弊があるかも知れないが、近年になって国際空港が開港し、新たな人と物の流れが生まれつつある。区画整備も進められ、常滑は今まさに新旧が入れ替わろうとしているかのようにも見受けられる。またそこでは、新たに生み出すべきものと守るべきものを見定めることが迫られているようでもある。そのような現状を背景とした町での展覧会「常滑フィールド・トリップ」に参加することとなった。


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静かな商店街があった。

商店街を横切るように一筋の小さな川が流れている。川はすぐ近くの海へ流れ込み、ゆっくりと満ち干を繰り返している。その川沿いに古い空き家があった。家主を失い、長い間の不在の影が黴の匂いと化したその古い家は、言葉をも無くしているようであった。

一夏の間に、その空き家を改装した。人の気配と空気、風が入ることで、家は少しずつ生き返っていく。そして生まれ変わった家の壁に、青い万年筆で文字を刻んでいった。それは家自体に言葉を問いかけるような行為でもあった。古い家に言葉が滲んでいく瞬間を、言葉の帰りを、そこで待っていた。




2008|壁面に万年筆
常滑フィールド・トリップ2008|愛知県常滑市, とこなめ中央商店街

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