Royal Blue Mountain -sight hearing- (2008.01)








個展「Royal Blue Mountain -sight hearing-」ではギャラリーの壁4面すべてに連なるように文章からなる青い山の姿を書き、山の景色に取り囲まれるような作品を展開した。また、そこには山の形と同時に街の輪郭もあぶり出されている。


今回の展覧会名は副題に「sight hearing」とあるが、これは「sight=視覚」と「hearing=聴覚」のふたつの言葉を繋げた造語である。

美術作品というものは、まずそのほとんどが視覚で捉えるものであり、文章というものは本などの媒体を通して読むものなので、美術作品と文章には認知という点においていくらかの隔たりがあるように思われる。僕はそのような文章を素材として今回の作品を作っているわけだが、文章とは視覚と聴覚の両方を同時に機能させて読む(あるいは見る)ものであると考えている。

例えば見知らぬ異国の言葉に出くわした時、僕たちはその文字を見ることはできても読むことはできない。僕たちは視覚で文字を捉えると同時に、頭の中でその音を再生させて(つまりその文字の発音を知っているからこそ)読むことが可能になる。

日本語であれ異国の言葉であれ、その言葉を改めて視覚的に捉えることができた時、僕たちは言葉が持っている本来の意味を越えて、新たな風光をそこに見つけることができるかも知れない。


また、今回はオープニングレセプションで朗読会を開催した。会場には山々の景色とそのディテールである文字たちがあり、その空間に文字を読み上げる声が広がっていく。そして「sight hearing」の持つ意味が視覚と聴覚だけではなく「景色を聴く」という意味にも広がることになっていく。





2008|壁面に万年筆
Royal Blue Mountain -sight hearing-|galleryアートフェチ

写真撮影|山田亘