Royal Blue Mountain (2006.12)




この作品は、ギャラリーの壁面に万年筆で文章を書いたものである。文章が山の形を成していて、万年筆の色がロイヤルブルーであることから「Royal Blue Mountain」と名付けた。

「文章を読むこと」と「山を登ること」は似ている。
文章の場合、例えば小説などの本を開いたら、まず始めに「そこに文章がある」という風に全体の形態(文字という記号の羅列)を認識する。次にその文章(ディティールである文字)をひとつひとつ読み込んでいく。文章をすべて読み終えた時、それをひとつの物語、ひとつのテキストとして認識する。
山の場合、その山に登る前に、まず山の全体像を見る。次に山の中に足を踏み入れ、色々な山道や草木や岩肌、川のせせらぎや鳥の鳴き声、緑の匂いや風などの、いわば「山のディティール」に触れていく。山から下りた時、その人の記憶の中にはその山についてのひとつのイメージが出来上がっている。

このように、
(1)全体を認識する (2)ディティールを認識する (3)再び全体を認識する
という三段階のプロセスが文章にも山にも見受けられる。
この「Royal Blue Mountain」を実際に前にした時、このプロセスと同様の効果を体感することができる。
そしてこの作品は「ものを見ること/読むこと」について、ものの認知に至るまでの距離を測るような作品である。





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