国土私理院地図 豊田・長久手・猿投山篇









 折々の用事で豊田をたずねるたび、二歳のころに名古屋へ越して当時の記憶があるわけでもない、親から聞いた話だけではたどりつきようもない忘郷として、この町のどこかに思い出せないだけの潜在的な接点があるのではないかと願いながら風景にふれようとしているじぶんがいます。
 最近、ひょんなことから山登りというものをはじめて、一昨年は寧比曽岳、昨年は猿投山へ登りました。いま住んでいる長久手からも猿投山を望むことができます(方角、位置からしておそらく猿投山だと思われます)。もしかしたらかつて住んでいた平芝町からも猿投山がみえていたかもしれない、みずからの過去の視野と現在の視野をつなげるものとして猿投山がひとつの指標になるのかもしれない、そんなそこはかとなく浅い羨望や頼りのない言葉をよすがに、いまはぼんやりと地図をみて風景をたしかめたりしています。


2019|インク、グラシン紙、国土地理院地図2万5千分1地形図(一図郭580×460mm)

アートデイズとよた2019 “Toyota Specific : Scenery and Signs 景色と気配” スカイホール豊田(豊田)
写真|吉田知古