2009/03/20

裏側へ

ここ数年、名古屋から東の東京、西の大阪や京都、北東の新潟へは何度か行ったことがあったが、北の北陸へは行ったことがなかった。山を挟んでちょうど反対側に位置する金沢への電車の中で、ぼんやりと車窓の景色を見ながら、日本の真ん中に縦軸の折れ線を描くような行路が頭の中に浮かんでいた。


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半日だけの滞在で大した観光地も回らなかったが、21世紀美術館と石川近代文学館をメインに、あとは町のなかをぶらぶらと歩いていた。

町の規模は、名古屋で言うと栄と本山を隣り合わせにしたような距離感で、繁華街と落ち着いた町並みとの行き来がしやすい印象であった。時折目にとまる古い家屋や小路、文房具店、古書店、水引の店など、目立たないくらいのささやかな町の営みに、深入りさせない程度の懐かしさを覚え、この町で文章を書いてみたいなと思わせてくれた。

それはたぶん、文学館で「金沢は日本のワイマール」とかいった言い方をしていたり、郷土作家の自筆原稿を見たりしたせいもあるのだろうが、例えば新潟の越後妻有で文章を書きたいかと言われたら、それはちょっと違う気もするし、はたまたもっと北の北海道へ行ったときにはそんなことは考えもしなかった。金沢へ来て改めて「名古屋で文章を書くこと」というのがどういうことなのかと、ふと頭をよぎったのだった。


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今は使われていないが日本海側の地域一帯を「裏日本」と呼称していたときがあったという。東京を日本の玄関口として、太平洋側を表側としたためにそのような否定的とも取れる言い方になってしまったらしいが、その裏側にこそ、いわゆる日本の良き景色がひっそりと息衝いているような気もする。

そういえば常滑に大野町という名の古い町並みを残したところがあるが、金沢の港にも大野という町があるようで、観光向けの画像を見る限りでは金沢の大野も古い町並みを残している。日本海側と太平洋側で風土の違いはあるだろうが、表と裏でどことなく、それとなく、つながっている。

2009/03/13

主語

四年ぶりに小説を書いている。

時折書くそぶりをしていたことはあったものの、中途でパソコンの中に放ったまま、書くにはまだ早いんじゃないかと諦めて、半ば逃げて、半ばタイミングを見計らっていた。今回も、いつ投げ出してしまうのだろうかという不安が常にあるのだが、か細い糸を手繰るように、あるいは気持ちの振れがあちらにいったりこちらにいったりしながらも、書きたいことのために言葉を試す。


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今書いているものが果たして小説なのかどうか、よく分かっていない。もしかするとそれは小説未然のただの文章かも知れない。美術のような一見の曖昧さが、そこにもある。ただそれは、一見するとそうなのであって、ひとつの見方によって浮かび上がる輪郭はあるはずで。ひとつの言葉を捨てて、超越しなければならない主語がある。

2009/03/09

移動について 名古屋以北以南

現在の仕事場は小牧にあって、電車で通勤する際はJR線で千種駅から春日井駅まで行き、そこから20分ほどバスに揺られる。車で出勤する際は国道19号線をまっすぐ進み、途中で左に折れた先の方にある。

電車の場合だと矢田川や庄内川を渡る時、守山辺りを通る時に開けた景色を臨むことができる。そこでは名古屋北部周辺の平地を大体見渡すことができ、平地の向こうにはやはり山並みが見える。特筆すべきはそれくらいで、その他に通過する景色はかなり単調なものである。

車の場合だとますます単調である。19号線にせよ、北に通じる41号線、22号線にせよ、どれも似たような景色ばかり。大型飲食店やコンビニエンス・ストア、ガソリンスタンド、ラブホテル、見落としてしまう小さな店舗、民家、貸し看板の連続。時折その合間に肩身の狭い田畑がある。そのような景色の中で唯一救いとなるのが山である。ビスタラインの果てに見え隠れする山の姿は、北上するに従ってその輪郭と色彩が明確になっていく。雑多な町並みから遥か遠く、それはなんだか桃源郷のように見えなくもない。


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海への道、山への道がある。
名古屋より南へ向かえば海へ、北へ向かえば山へ通じる。

僕の勝手な思い込みなのか、それともたまたまその時の天候がそうだっただけなのか、あるいは地形や風の流れから生じる自然のものなのかは知らないが、南へ向かう時というのは大体晴れていて空気も風も心地良い。反対に北へ向かう時というのはどこか薄曇りで、しっとりとした天候が多いような気がする。

例えば同じ焼き物産地でも、海の近くの常滑と山の近くの美濃や土岐ではまったく雰囲気が異なっていた。常滑では空気が澄んでいるように感じられたのだが、美濃・土岐ではどこか影のあるような、山の深みを掬い上げたかのような湿っぽさがあった。


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名古屋以外の地域の道がどんな景色の中にあるのかは知らないが、地方都市にある道というのは大体似たようなものなのかも知れない。日本海側と太平洋側とでは風土も変わってくるのかも知れないが、山を頂き、麓から広がる平野に田畑と民家、ビルとマンション、再び民家と田畑、そして海へと繋がるラインがある。

最近ではこのラインを行ったり来たりして、海と山を見ている。

2009/03/06

Landscape

階段を上ったところに、四角いガラスがはめ込まれたドアがある。そのガラス越しに白い壁の景色が目に入る。いつも、今日はそこにどんな景色が描かれているだろうかと思いながら階段を上る。その入口の景色で部屋全体の雰囲気が決定される、扉絵のような瞬間がそこにある。

その瞬間に、自分たちの景色を作れたことは幸せなことである。
あとは伝わることを願うばかり。


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「Landscape」

木村彩子|源馬菜穂|水野勝規|light note(伊藤正人+吉田知古)
河田政樹|寺田就子|大岩オスカール|三輪乙彦

会期|2009年3月7日(土)–4月11日(土)
時間|12:00–18:30 日/月/祝日休廊
会場|GALLERY CAPTION(〒500–8846 岐阜市玉姓町3–12 伊藤倉庫)

□reception for artists:3/7(土) 18:00–20:00


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