2009/06/22

思い出す靴

仕事が終わってから、まだ閉店時間まで間に合いそうだと車を走らせていると、学生の頃、学校帰りに友人の車でパルコに行ったことを思い出した。

ちょうど今くらいか、もう少し夏に近付いた季節で、ドイツ留学を直前に控えたときであった。パルコに行くこと自体は別段なんでもないことなのだが、街のネオンとなまぬるい風の感触が五年前の別段なんでもないその日を蘇らせる。


 ◇


まるで五年振りに訪れたかのようなパルコで、修理に出していた靴を引き取った。

確認のために履いてみると、ゆるみきっていた革靴がまるで買った当初の状態に戻ったようにきつくなっていて、その感触がベルリンのミッテ地区のトリッペンの店まで意識を飛ばすのだった。

ずいぶん悩んでいた覚えがある。ドイツ人の店員は、良い色でしょう、と言った。試しに履いてみたが少しきつくて、他のサイズはないかと訊ねたのだがそれが最後の一足であった。履いていくうちに革は馴染んでいくわよ、とその店員は言った。

たしかにこの四年のあいだで、革は充分なほど馴染んだ。


 ◇


同じ靴で歩いていくことで、思い出すことも馴染んでいく。
また履けますね、とすこし笑みを浮かべながら、パルコの店員は言うのだった。