note house/08 -天窓の光-
まだ少し、言葉が悩んでいるようで、形にならないままペン先の青に重みを預けてしまった感がある。
漆喰を施した壁に定着材となるドーサを引いて、いよいよ書く段となったはいいけれど、やはり予想通りと言うべきか、一ヶ月に渡る古家の改装作業で何かを見過ごしてしまったような気がしている。
どこかに不安はあって、それを解消できないままだった。ホワイトキューブではない異様な重苦しさ。見るべき対象は家なのか、町なのか、それとも海なのか。そしてその錯綜した不安は文字の形や全体の景色に如実に現れていた。壁の白さと、そこに書かれた青い文字の比率がどうも良くない。
しかし、やり直しというのは時間的にも許されないので、とにかく持っていた言葉はできるかぎり書き切っていった。ペン先は平滑ではない壁とぶつかり合い、時折、青い飛沫が小さく染み込んだ。
それだけやってしまうと、決して納得はしていないが余分だった荷物が減ったようで、幾分身軽になれた。
◆
光。
それだけの言葉ではなんとも陳腐で味気のないものなのだが、この家の天窓から射し込む光が、最後に残された希望でもあり、この家へ初めて入った時に見た最初の光でもあった。
